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  • 執筆者の写真Ngoc

社内キャリア v.s. グローバル人材が求めるマーケット・キャリア

日本に外国の人材を呼び寄せて採用している経営者、海外に拠点を作って現地の人材を採用している経営者、みんな口揃えて言っている苦情の一つ

「せっかく時間や費用をかけて仕事を教え込んできたのに、さてこれからという段階に、会社を辞められてはとても困ります。」


確かに、辞められて嬉しいと思うことはほとんどない。

ではなぜ社員が辞めているのでしょう。


世界各国労働者の離職(転職)の理由を聞いたリクリートワークス研究所の調査がある。そこには「賃金への不満」が大きな理由という結果が書かれている。

(そうか、日本人は賃金に対する不満がほとんどないのか。。。)

だが、これを見て単純に給料が高い会社に転職する、つまり自社も高い給料を出せば引き止められると考えるのは安易すぎる。

同調査レポートにこんな結果も書かれている。



仕事をする上で大切だと思うもの、日本以外の各国の1番目は「賃金と福利厚生」。この結果は上記の転職理由にも一致する。


さて2番目以降はどんな理由があるでしょう?

上記の数値をマップに置き換えたバージョンがわかりやすい。

このマップに注目したいのは明確に自己の成長機会を求めているベトナムと、明確なキャリアパスを求めている中国、対照してこんなことをまったく考えていない日本。

同じぐらい会社のステータスとキャリアパスを求めているインド。

そして表面上似たような数値の「自分の希望する仕事内容」を求めているアメリカと日本だが、その「希望する仕事内容」の中身は果たして本当に同じものか?



私の経験からすると、それぞれの国の人が考えている「キャリア」の意味に相違がありそうな気がします。

終身一企業で働き続ける前提、転職はあってもあくまで例外のようなものだと考えている日本人が言っている「キャリア」の意味は、「その企業の中のキャリア」というニュアンスが強い。つまり、新卒で入って数年頑張ったら主任になり、そこから年月と功績で班長→課長→部長といった具合に階級が上がり、当然ながら並行して給料も上がる。20年以上頑張り続けてその「企業の幹部になる」ことは最高のキャリアとして認識されている。

一方、転職が当たり前、むしろ一生同じ企業にいた方がおかしい、という文化を持っている国々においては、働く人が考えている「キャリア」は「労働市場に認められる・売れるキャリア」の意味合いが強い。

自分が労働市場にいることを常に意識し、自分の市場価値が今どんな感じなのかを常に確認する。そして自分の市場価値を上げるために今何をすべきか、常に考える。


この思考は欧米諸国ではもはや模範的でしょう。日本に近いアジアでは、特に動きが速いIT業界、中にも特に若い人材がたくさんいるベトナムやインドにもはっきり見れる。営業やマーケティング等、即戦力がよく求められる業界においてもよくみられる傾向だ。


自分の市場価値を上げるために自分なりのキャリア戦略を考える。そしてそのために今学ぶべき知識、積むべき経験を人が考え、それを求めるために動く。これがグローバル人材の常識とも言えるでしょう。

わかりやすい例として、若いITエンジニアが市場をみて「この数年先はPythonのエンジニアは上がりそうだ。私はPython達人になりたい」と考える。そうすると、オンラインコースなり独習なりPythonを勉強する。そして実践的な経験を求めるべくPythonの開発案件に参画する機会を探す。

この時に、もし社内にPython開発案件が全くないならば、Python案件をたくさん持っていて参画させてくれそうな会社を探すことも有力的な選択肢である。

この考え方&動き方をして、例え転々と転職していても、実際にPythonの開発経験をたくさん積むことができてPythonエキスパートになれれば、どこの会社に行っても高いポジション、高い給料のオファーがもらえる。

これがために、例え直近給料がちょっと低めでも(Python分野においては初心者なためPythonプログラマーとしての給料は高くない可能性がある)、長期的に確実に上がっていくのが見えていれば、当分を多少低い給料で我慢することも十分に考えられる。

IT技術以外にも例えば「消費者向けマーケテイングキャンペーンの経験」といったような業務経験は、違う会社に入っても即戦力として高いポジションが得られる。


前節の「仕事上大切だと思うもの」の調査に「教育研修の機会」を言っているベトナム人も、「明確なキャリアパス」を言っている中国人やインド人も、「自分の希望する仕事」を行ってるアメリカ人も、その言葉の中身は「自分なりのキャリア戦略を実現したい」というところに共通しているのではないかと、私は解釈しています。



では企業の経営者として人材を引き止めるためにはどうすれば良いでしょう。

勿論、どの企業も良い人材が欲しい。「良い人材」の定義は企業や場面ごとに様々あるでしょうが、経営者はそのために考えた人材像の通りの良い人材が欲しい。

ならば、その良い人材が欲しいものを企業が提供しないといけません。


(1)待遇:賃金&福利厚生

いうまでもなく、優秀な人材には見合った給料を払う必要がある。

逆に言えばマーケット的に妥当な給料であればOKだし、マーケットより高い給料を払うことはむしろ逆効果をもたらすこともあったりする。

もっとも避けるべき状況は社員が辞めると言い出し、その足を引き止めたいために慌てて昇給を提案すること。それでもし引き止めれたとしても短期間でしか効果がなく、同じ状況の繰り返し&繰り広げという悪循環に落ちてしまう。

明確な評価基準を設定し、マーケットを見ながら計画的に昇給していく方が確実に高効果が得られます。


(2)明確なキャリアパス=成長の機会=市場価値を高めていく環境=長期的な高賃金

前節で説明した通り、労働者にとってのキャリアとは、自分が学びたいスキル、積みたい経験を得て成長し、それによって自分の市場価値を高めていくこと。

この意義は「例えどこに転職しても良いオファーがもらえる」という、労働マーケットに良いポジションを作っておくことである。

では、会社がこんなことを提供してしまったら社員が辞めてしまうのではないでしょうか?

実はその真逆。

働いても成長する機会が見えない、自分の市場価値が上がらないと感じたら社員が「このままではヤバイ」と思い、より良い環境を探し出す。 IT業のような売り手市場では探せば見つかるもので、すぐに辞めてしまう。

この会社にいればたくさん学べて成長できる」と思れば安心して仕事に没頭し、他所をみるために時間を使うこともしない。

「転職させないために市場価値を高めてあげておく」と言うと矛盾しているように聞こえるかもしれないが、実際これを提供できる会社は「最高の会社だ」と評価され、そんな良い会社は辞めたくないわけだ。


また、若くて優秀な人材はスピード感を求める。

慎重な管理職は「じっくり学んでしっかり経験して欲しい」という想いに対して若い部下が「そんな長く待ってられない」というのがありがちなギャップ。このギャップを埋める方法は明確な評価基準を掲げること。上司の「独断と偏見」で評価されたと思わせず、客観的な基準を持った評価がなされているとわかれば、若者も余計な不満を持たないで済む。



もちろん社員が良い会社に求めるものとしてこれ以外に職場の人間関係や勤務地やワークライフバランスなど様々あるし、筆頭に挙げた調査にも重要な項目が網羅されています。

しかしながら優秀な人材ほど自己キャリア、つまり目下の収入ではなく長期的な収入を最優先に考えて行動する傾向にあります。日系企業もこの考え方を念頭において制度設計をなされた方がより多くの優秀な人材を引き付けられるのではないかと思います。


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